五感が磨かれる「子どもは地獄耳」(『土の匂いの子抜粋』)

「えっ? 聞いてたの?」

 子どもたちが遊ぶかたわらでおしゃべりに花を咲かせる母たちは、子どもの地獄耳にいつも驚く。だが、考えてみれば、生後たった1年で複雑な言語の大半を理解してしまう超能力者の彼らが、おとなよりはるかに敏感な聴力をもっているのは当たり前のこと。

 全身耳であるような子どもが谷戸に行けば、虫の鳴き声、飛ぶ虫の羽音、梢のきしめく音、風が通り抜ける葉ずれの音などを、いちいち言葉に表さなくても感じ取っている。ウグイスの鳴き声を何回も聞けば、姿はわからなくても、谷戸の春と結びついて体にしみ込む。

 カエルを捕まえて見せてから、「田んぼでカエルが鳴いているね」と語りかけることもある。「誰の声?」「何の音?」。その正体の固有名詞はわからなくても識別し、自然の音の心地よさが浸透していく。聞き分ける耳が育つ。

 生まれたばかりの赤ん坊でも、直接語りかける母の声には耳を傾けるが、機械音には反応を示さない。感情や状況が伝わる音をたくさん届けたい。

青空自主保育なかよし会

青空自主保育なかよし会は、子どもたち、親たちの仲間づくりをしよう、豊かな鎌倉の自然のなかで思いっきり遊ばせようという趣旨のもと1985年に始まった会です。鎌倉中央公園を含む山崎の谷戸を中心に野外で活動しています。潮の香り、土の匂いを全身で感じながら、子どもたちと一緒に鎌倉の四季を楽しんでいます。